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複雑葉状性タイ類(いわゆるゼニゴケの仲間)を使って研究を行っています。
ミカヅキゼニゴケの有性生殖
ミカヅキゼニゴケ(Lunularia cruciata)は、世界に広く分布する雌雄異株の葉状性タイ類です。一年を通して無性芽を多数生産しており、有性生殖器官が稀なことから、国内では専ら無性生殖により繁殖していると考えられてきました。しかし、ここ30年ほどの研究で雌雄の生殖器官と胞子体が報告され、有性生殖も行っていることが示唆されています。本種は、ゼニゴケ(Marchantia polymorpha subsp. ruderalis)と系統的に近縁で、形態的にも共通した特徴を持っています。ゼニゴケの場合、一年を通して有性生殖により多数の胞子を生産し、分布を広げているように見えます。一方、ミカヅキゼニゴケは、分布の拡大のためにさほど積極的に有性生殖を利用しているようには見えません。この違いは何を意味するのか、ミカヅキゼニゴケにとって有性生殖とは何なのかを解明することを目的として、研究を行っています。

ミカヅキゼニゴケ A. 特徴的な三日月型の無性芽器をつけた葉状体、B. オスの葉状体上に形成された雄器床、C. 胞子体をつけた雌器托(写真はすべて筆者撮影)
ゼニゴケの受精の詳細なプロセスの解明
受精は雌雄の配偶子が融合することを指し、有性生殖のプロセスの中でも重要なイベントの一つです。コケ植物では、精子と卵という特殊化した細胞により受精が行われます。コケの受精という現象自体は、100年以上前から観察されてきましたが、まだまだ不明な点が多くあります。たとえば、精子が卵と融合する前後で、細胞内で具体的にどのようなことが起こるのか、融合後の精子核や微小管構造はどうなるのか、多精拒否があるのか、卵は同種と異種の精子をどう見分けているのか、卵の寿命はどれほどか、などについては情報がありません。また、こうした情報は、植物が陸上化を果たす過程で、有性生殖をどのように進化させ陸上の環境に適応してきたかを知る大きな手掛かりになるかもしれません。

ゼニゴケの有性生殖に関与する細胞・組織 A. 造卵器、B. 精子(明視野像)、C. 精子(DNAを青、微小管を緑で標識した蛍光像)(写真はすべて筆者撮影)
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